本を作る上で特別なことはなにか

読書と編集 千葉直樹です

つい最近まで、本を作る、出版するということは特別なことでした。今でもそう思っている人は多いし、実際売れる本を作るというのは大変なことではあるのですが、技術的な面で見たら思いっきりハードルが下がりました。

紙でできた手に取ることができる本。僕も大好きです。でも、未来を考えると、多分浮世絵の版画を集めるというような特別な趣味の世界になるかもしれません。

出版の過程自体は良いコンテンツを作るために作られた過程で、欠かすことが出来ないものですが、テクノロジーの進化によって不要な工程も含まれるようになっています。

例えば、印刷技術のない時代は筆写に頼っていたわけで、それは文字を読み書きできるという特殊なリテラシーに頼って行われていました。量産は難しく、だから写経という行為には人々に法を広めるための実質的な価値があり、役に立つ修行であったわけですね。

印刷技術は出版を大きく変えました。何しろ機械がどんどん本を作るわけです。筆写の意味は象徴的なものになり、誰もが本を手にできるくらいコストの安いものになりました。今や「本は手書きじゃないとね」なんて言う人はまずいないでしょう。

同じように、電子書籍が当たり前になることでしょう。

では、電子書籍になることで何が変わったのでしょうか。

僕は、製版する過程がなくなったのだと思います。本には版がありますね。刷りなんてのもある。テキストのバージョンと考えられるのですが、昔はそれを変えるのが大変だったのです。活字を人が拾っていた頃なんかはほんとに大変。何度も人が確認して、間違いがないようにしないととんでもない無駄が出てしまう。書店に並んでしまったものを総とっかえするなんて大変なことになってしまいます。

その頃の慣習がまだ出版業界には残っているのではないでしょうか。

今はテキストを書き換えるのは簡単です。そして、その書き換え過程をバージョンとして保管しておくこともできます。これ、ほとんどコストがかかりません。

もちろん文章の正しさを何らかの形で担保する必要はあるけれど、間違いがあったときにそれを直すコストは格段に低いのです。

インターネット上のテキストは基本的にそういうものです。

技術的なコストが安いので、誰でも出版できるようになりました。もちろん質の問題をどう確保するかという問題はあるわけですが。

Wikipediaがある程度成功しているように、内容についての正しさはたくさんの人のレビューという形で担保することもできる時代になりました。これを心許ないと思う人もいるかもしれませんが、私達がすでに思いっきり依存しているインターネットのコードの大部分はそういう形で出来上がっていたりするのです。

本ではない形でテキストから収益を得る仕組みもできてきました。徐々にこの形は一般化するでしょう。

これが電子書籍のメリットですね。

というわけで、本を作るというのは特別なことではなくなっているのです。

電子化されたデータとしての本は、様々なメディアに変形することができます。代表的なのは音ですね。ひょっとするといずれは小説から自動的に映画を起こすことができるようになるかもしれません。自動で作る様々な種類の映画の中から自分が好きなものを選ぶというのも当たり前になるかもしれません。自分が好きな役者(これももはや生身の人間ではないでしょう)を配役して楽しむようになるかもしれません。

もっと考えると、わざわざ文字で表すということ自体が古くなってしまうかもしれません。

本とコンテンツは別物です。大事なのはコンテンツ。中身です。この本質を突いた表現はどんなふうに技術やメディア(媒体)が変わろうと人に伝わるモノを持つでしょう。それこそが「特別」なものなのでしょう。

今は電子書籍でまとまった表現をするコストがとても安い時代です。どんどん書いてみれば良いのではないかと思います。

本が好きで、自分も本を書いてみたいと思っているなら、やってみましょう。一歩進むだけです。

ちょっと宣伝になりますが、読書と編集の本の作り方のひとコマをお話します。

読書と編集が本を作るのをお手伝いしているtabizumaさんの最新刊、

これですね。

これ、実はtabizumaさんがコツコツ書き溜めたブログのデータを取り出して加工したものをベースとして加筆・修正してできました。ベースは汎用のデータを取り出すプラグインを使って出したデータを僕がちょっとしたスクリプトを書いて整えただけのものです。

そこから加筆・修正だけでなく、表紙を含めてtabizumaさんが自分の作りたい本の形に整えました。旅行記にどうしても必要な地図は読書と編集の絵が描けるスタッフが作成しましたが、tabizumaさんが持っているコンテンツがあるから本にするのはさほど大変ではなかったのではないかと思います。本にしてみたい。そういうtabizumaさんの希望が形になったものです。

残念ながらどんなブログでもこんなふうに作れるわけではありません。tabizumaさんがシンプルにhtmlの、文章を論理的に表すという精神から外れることなくコンテンツにこだわって書いた文章があったからやりやすかったのですね。

というわけで、原稿となるものをどのように作っていくのが効果的なのか。読書と編集はそこからいっしょに考えます。ITを使って上手にコラボレーションして、いろいろな方に著者になってほしいと考えています。

2019年も暮れようとしています。今年はどんな年だったでしょうか?

2020年も読書と編集をよろしくお願いします。

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