世の中の進む方向を考えてみる
読書と編集 千葉直樹です
1月の初めに、アメリカで開催されたCES2020で、トヨタが「街をつくる」という発表をしました。ニュースで見た方もいらっしゃると思います。
普通、トヨタといえば自動車を作っている会社と考えますよね。
そのトヨタが街を作る。
これ、どんなことを表しているのでしょう?
GAFAという言葉もあります。GAFAMという事もある。Google・Amazon・Facebook・AppleとMicrosoftの頭文字をとったものですね。これらはITに関するテクノロジー企業で、多国籍企業です。アメリカが発祥ですからアメリカの会社というイメージは強いですが、今はそれよりもグローバル企業というほうがふさわしいでしょう。
BATHっていうのもあります。Baido・Alibaba・Tencent・Huawai。中国のIT大企業ですね。
これらの企業の特徴はなんでしょう?
ちょっと乱暴な書き方になりますが、これらの企業の共通の特徴は、「超国家」ということになるのではないかと思います。
ITに関わる産業はこれまでのどの産業よりも早いスピードで進化しています。これは実は当たり前のことで、インターネットによって人々の智恵を集めやすくなったからです。
問題はここからで、どんどん進化するテクノロジーのスピードに、国という制度が追いつけなくなってきているのです。
他方で、ノイジーマイノリティーという言葉が生まれてきています。最近話題になったことで言えば、除夜の鐘がうるさいという一部の人の声に押されて中止になるというのがこの言葉に関連しています。
ノイジーマイノリティーの是非はとりあえず置きますが、個人の欲求を社会が止められないという現象が生まれてきているという見方ができます。
お役所仕事という言葉があります。形式主義で非能率的なことを言います。これまでは国という権力を背景にこれに従わざるを得ない時代でした。遅くて非効率だけれども、国や行政に従って暮らすのがある程度合理性をもった社会だったわけです。
しかし、個人の欲求はこの非効率を許すことができないところに進んでいるのです。
これ、テクノロジーで解決できることがずいぶんあります。しかし、テクノロジーの社会適用を国や行政が妨げるという古くて新しい問題に直面しているのです。
ここで、最初に出てきたトヨタとかGAFAM、BATHを思い出しましょう。
トヨタは街を作る実験を自前の土地で行うのです。GAFAMは多国籍であることで暗に陽に国家の規制を逃れて活動を行っています。売上の規模は国家予算級です。BATHの様子はよくわかりませんが、どの企業も国際商圏にアクセスしていて、これも遠からず国家のコントロールの外に出ることになるでしょう。
トヨタの街、もちろん治外法権というわけではないけれども、私有地ということで規制が及ばないこともできる場合があります。それを最大限活用してテクノロジーを進化させようという動きと見ることができます。これは未来の我々に大きな利益となるかもしれません。
GAFAMやBATHはグローバル化という流れの中でローカルな古い規制に挑戦していると見ることができます。私達はその恩恵をすでにずいぶん受けているのです。
日本では国会の影響力が小さくなってきています。何年も空転(象徴的に。実は動いているものもある)していても社会は動いているということに誰もが気づき始めている。とりあえず放っておいて、自分たちで必要で役に立つことをやろうぜという気風が生まれてきてもおかしくないわけです。
変化を嫌う人々にとっては脅威に感じるでしょう。しかしこういう文脈で考えるとさまざまな人や企業の動き、国の行く末が見えてくる気がします。
こんな着想を得るもとになった本とビデオを紹介しておきます。
大企業やお金持ちを批判的に見るのは楽ですね。でもそれは社会を変えることにはならないのです。
自分が社会に対してできることは何なのか、個々人がきちんと考えて実行することが必要で、そのためにさまざまのことを学び、世の中を見極めていく力をつけなくてはならないのですね。