テレワークで考える本当の共有(4)
読書と編集 千葉直樹です
前回までに、以下のようなことを書きました。
- 仕事で作る文書(Word、Excel、PowerPointやそれに類するツールで作る文書)でよく行われる共有の方法とその問題点
- これまでのリモートワークのためのシステム導入の難しさ
- クラウドの安全性とアカウント管理のこと
ここまでで、文書管理をするならクラウドを使うほうにメリットがあり、そのためにはアカウントの管理が重要だということを理解されたと思います。
今回は、この連載のタイトルにも入っている「共有」について考えてみます。
第一回で、メールによる共有は共有ではなくコピーを作ることであるという話をしました。メール自体がコピーを配布するシステムとして作られていますから、添付ファイルをつけるというのがコピーを作ることになるのは当たり前です。
たぶん、ひとつの文書を複数の人で分担して作るときに、配った文書を回収してまとめるという作業を行っている人も多いと思います。
これ、めんどくさくないですか?
面倒だとは思わなくて、当たり前だと思っていたら、それはかなり古い考え方に染まっています。紙ベースの考え方です。ITを使っているとは言えません。
では、共有サーバ上に文書をアップロードして関係者がそれを使うという場合はどうでしょう?
たぶん、誰かがその文書を編集しているときに、文書ファイルがロックされていて、使えるようになるまで待つということがよくあるのではないかと思います。
よくわかっていない人は、ロックされているということがわからなくて、ダイアログに適当に答えて、ローカルに作ったコピーを編集して満足していることもあります。
共有サーバを使うことで、共有について一歩進んだ段階ではありますが、これはまだ参照ができるという段階に、たまに編集できるというオプションが付いただけのことです。
本当の共有は、ひとつの文書を、複数人で、同時に編集できる状態のことを言います。
Googleドキュメントの実例を見ましょう。
ひとりで三役やっているために同時に編集しているところをお見せすることはできませんでしたが、カーソルが3つ存在していて、それぞれ書き込むことができそうだということがわかったのではないかと思います。
これは単純なファイル共有ではできません。
仮に、同じような共有ができたとしても、それぞれの操作の反映にタイムラグがあると共有の良さが活かせません。
そして、重要なことは、これらの編集が誰によってなされたのか記録されることです。
Googleのドキュメント・スプレッドシート・スライドは、この同時編集に耐えられる仕様になっており、いかにも同時に編集しているという実感が得られるようになっています。
マイクロソフトのWord、Excel、PowerPointにも同様の機能があると思われますが、ソフトウエアのバージョンやインストール形態などによって動作が変わってしまう問題があります。
Googleのアプリケーションは、そもそもブラウザ上で動き、当初からクラウド上のファイルを操作する形のソフトウエアとして実装されているので、このような共有機能を安定的に利用できるアドバンテージがあるのです。
このような共有ができるということは、共同作業を行うときの生産性をぐっと上げることになります。
ごく簡単な例ですが、スプレッドシートで仕事の進み具合を数人の人がそれぞれ書き込むとき、誰かが書き終わるのを待つ必要はありません。自分のタイミングでいつでも書き込むことができるのです。共同で仕事をしている人の数が増えるほどこのメリットは大きくなります。
共有について理解したでしょうか。
では、もう少し進んだリモートワーク(テレワーク)のためのツールのことを知っておきましょう。
まず、Googleアプリケーションが動作するのはGoogle Driveです。これはただのネットワーク・ストレージではありません。実はチャットやビデオ会議の機能も含まれています。これらの機能を使うために必要なことはGoogleアカウント(たぶんみなさんの大半はGmailのアカウントを持っているでしょう。それがGoogleアカウントです)を取得し、ブラウザ上でGoogle Driveを使うということだけです。
もちろん、Googleアカウントは個人的に使うものですから、それを仕事に使うのはどうかという考え方もあるでしょう。
その場合は、会社などの組織がG Suiteを導入するという方法があります。
マイクロソフトは、最近Teamsというグループウエアを展開しています。チャットツールとしての側面を強く打ち出していますが、実際にはテレビ会議、ファイルの共有などもできる統合ツールの側面が強いです。パソコンのアプリケーションであることは馴染みやすい面があるかもしれません。
その他に、Slackというコラボレーションツールもあります。これはベースがチャットツールですが、さまざまな拡張機能を追加していくことによってテレビ会議やファイル共有ができるようになっています。
たくさんのことを一気に話してきましたので、なんだかわかったようなわからないような感じがしている方も多いかもしれません。
しかし、Google DriveもTeamsもSlackも無料で使い始めることができます。
自分が行う様々な活動を、他の人と共同で行うときに、これらのツールを使いこなしていれば、いざ、会社でこのようなツールを使うということになったときに素早く移行することができます。
そして、アカウント管理の重要性を理解すると、いずれは組織所属のアカウントを使わなくなる可能性も見えてくると思います。
それぞれが持つ固有のアカウントを組織に接続して使うようになるとしたら、企業のあり方も大きく変わるでしょう。
そのようなことをこちらで連載しています。
読書と編集では、このあたりの話を基礎から学ぶための講座として、
を用意しています。Googleに偏っていますが、考え方はどのクラウドを使うにしてもほとんど変わりませんので、他のクラウドを使う場合の考え方にリファインした講座も可能です。
テレワークは単純な文書の共有だけで成り立つものではありません。しかし、ここでアカウントが何を表すものなのかを理解できたら、社内の業務システムを外から見えるようにして、そこにどこからでもアクセスできる未来が見えてきます。
テレワークは一時退避の手段ではありません。仕事を変え、企業のあり方までも変えるものなのです。
遠からず、それが当たり前になるでしょう。
さあ、準備を始めましょう。
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