歯がゆいだろうなと思ったこと(ソフトウエア工学)
読書と編集 千葉直樹です
オンラインのイベント
昨日、こういうイベントがあったので参加というか、視聴してみました。
BPStudy#154〜社会やビジネスに新たな価値を生み出すソフトウェア工学(SE4BS)
ソフトウエア工学という分野にふれるのは随分久しぶりで、今はどんなことが議論されているんだろう?という興味があります。
ただ、ソフトウエア工学って、実際のところ、工学らしい工学になっているかというと微妙で、色んな人が苦心してカタチにしようとしているところ、というのが本当のところかなと思います。
それもある意味しかたがないのです。ソフトウエアがソフトウエアとして認知されるようになってからまだせいぜい4~50年というところだし、その間に急速に技術は発展しているし、という状況で、ぶっちゃけ新しいソフトウエア技術を後追いするという感じにならざるを得ないというところがあるのですね。
変化が激しすぎて、その中のエッセンスの部分を取り出して体系化するのが難しいと思われます。
残念なことに、ソフトウエアに関わっている人たちが、「ソフトウエア工学」というものの存在をほぼ知らないし、知らないとちゃんとしたソフトウエアが作れないかと言ったらそうでもないわけで、まあ、きちんと成立するには時間がかかるのかもしれません。
実際、僕の30年のソフトウエアに関わる会社員生活では、この手のものにずいぶん振り回された感じで、正直煙たいなという感じが強かったのです。
反面で、長くソフトウエアをやっていると、その中になんとなく「芯」のようなものはあるような気はするので、それをきちんとまとめようとする動きは応援したい気持ちもあります。
ただ、昨日の議論を聴いていて、あいかわらず「大物狙い」的なところがあるなという感じがしたのも事実でした。
ソフトウエアの位置づけが変わっているかも
最近、ごく普通の主婦の人たちが、結構真面目なプログラミング言語やWebのフレームワークを使って、自分の身近にある問題を解決するためのアプリケーションを比較的短期間で組み上げるのを見ています。
使うモノはもっと多岐に渡っていて、イラストや写真を操作するアプリケーションや、クラウドで提供されるサービスやAPIなどを使うこともあります。
もちろん比較的簡単な技術しか使っていないし、コードをレビューするとさまざまな問題があったりはするのですが、高尚なことは抜きにしてとにかく役に立つアプリケーションを作ってしまうのです。
これ、実はとてもすごいことなのですね。
普通の人が自分が必要とするプログラミングをするんです。
そこには大上段に構える理論は不要です。
SIerとか、昔からソフトウエアを考えてきた人から見たら、とんでもないやり方になっているかもしれないけれど、それはちゃんと役に立つアプリケーションなんです。
ちゃんと、自分が問題と捉えていることに対するソリューションになっているからなのですね。
もちろん、それらはソフトウエア工学の世界で積み上げられた知見で構成された道具を使って作られているわけですから、ソフトウエア工学が不要という話につながるわけではありません。
まあ、言ってみれば、自動車ですよね。工学の成果としての自動車が存在していて、今は男女年齢問わずその仕組みのことはあまり考えずに自分の目的を達成するために乗り回している。
ソフトウエアもやっとそういう段階に来ているのだと思うのです。
で、自動車のことを考えた時、女性が免許を取るようになったというのは大きかったと思います。
僕が子供の頃はクルマに乗る女の人というのは珍しかった。今より運転するのに知識も必要だったように思います。信じられないかもしれませんがそういうものでした。たかだか40年ほど前の話。
今のクルマはやっと女性の感性とか特性に寄り添ったカタチになってきました。これはきっと女性がクルマづくりの現場にも進出し始めたということでしょう。
昨日のイベントのスピーカーは男ばかり。
これ、日本のソフトウエア工学の世界がなかなか脱皮できない問題点の一端なのではないかと思いました。
身の回りの問題を解決する視点から離れすぎているところに、隔靴掻痒感を感じる原因があるのではないか。
もちろん、だからこそ、昨日のイベントには「社会やビジネスに新たな価値を生み出す」というタイトルがついているのでしょう。
でも、そんな大げさに構えなくてもそれをやっちゃっている人がいるし、そんな人がどんどん増えていくのは間違いないのです。
だとすると、「ソフトウエア工学」はどんな役割を果たす必要があるのでしょう?
日本のソフトウエアの世界がイマイチな原因、このあたりにありそうな気がします。
まあ、僕は研究者ではないので、どうでも良いといえばどうでも良いのですけどね……
ちょっと考えさせられるイベントではありました。