セキュリティチェックの問題点からデザインについて考えた

読書と編集 千葉直樹です

家人が仕事のお休みの日で、朝食をとりながらいろいろ話をしていて、その中に最近の職場の話がありました。

家人の職場は個人情報の管理に厳しいところで、オフィスに入る前にチェックがあるらしいのですが、そのチェックがどんどん厳しくなっていくという愚痴でした。

僕はこの話を聴いた時に、直感的に、少なくともこの職場はセキュリティチェックについてあまり真面目に考えていないなと思いました。

チェックが厳しく、項目が増えていくのは、守らなければならないセキュリティについての考察が足りなくて、皮相的なチェックだけを行っているからで、インシデントが起きるからチェック項目が増えるというのは実際にはチェックの効果が上がっていないことを示しています。これは職場全体に無用の負荷を増やし、結果的にインシデントを増やしてしまうという皮肉な結果を招くのです。

細かい状況を知らないので勝手なことを言っているわけですが、まあ、ちょっと違った角度で俯瞰するというのは悪くないのではないかと思います。

これ、多分、セキュリティを守るためのデザインがなされていないということなのでしょう。

インシデントが起こらないようにするためには、意識してチェックしなければならない項目を増やすのは逆効果です。意識せずにセキュリティを守ってしまうデザインが必要なのでしょう。簡単なことではありませんが。

この話を聴いた時に僕の頭に浮かんだのは、「捜検(そうけん)」という言葉でした。

これ、あまり目にする言葉ではありません。僕の頭のなかにこの言葉があったのは、とある博物館を見に行った記憶からでした。

その博物館とは、夕張市石炭博物館

その展示の中に「捜検」がありました。

日本の炭鉱は鉱山ですね。地下深くまで穴を掘ってその奥で石炭を採掘する。これはイメージできるでしょう。

石炭と言えば燃料ですよね。ということは、炭鉱の中は火気厳禁なわけです。これは誰もが想像しますよね。

「当たり前じゃん」と思うかもしれませんが、ここに無意識に火気を持ち込んでしまうということをいかに防止するかは文字通り命に関わる問題です。

そこで、入坑前に「捜検」を行います。

タバコを吸う人を見るとわかりますが、喫煙行動はほとんど無意識なのですね。今でもガソリンスタンドでくわえタバコをして注意される人を見かけることがあるくらいで、とても危険な無意識行動をとってしまうもののようです。

炭鉱の操業が活発だった頃は、成年男性はほとんどタバコを吸っていました。僕くらいの年代の人は経験があると思いますが、子供の頃、大人はタバコを吸うものだと思っていたくらいです。

そんな状況ですから、ポケットに喫煙具を無意識に持ったまま入坑してしまうことがあったのでしょう。これは大変危険なことなのは想像がつくと思います。だから、入り口で「捜検」を行うわけです。

要するに喫煙具を持っていないかチェックする。警備員がチェックしたり、二人ペアになったお互いにチェックしたりします。

その中に、「自己捜検」というのがありました。

自分でチェックすることなのですが、僕はこのやり方にとても感心したのです。

この写真を見てください。

これが自己捜検のツール。鏡ですね。全身映る鏡。

鏡で見てチェックする。なんとなく心もとない感じがするかもしれませんが、これ、きっと効果が大きいと思うのですね。

安全のチェックのために自分を見るのです。命がけの坑内労働に向かう自分を見て点検する。これは他人を見るのとは全く違うでしょう。より深く安全を意識する。人が得る情報の8割くらいは目からだといいます。いつもと違う様子はすぐに見つかるでしょう。そして、安全のための情報は無意識に刻まれやすくなります。

ジンクスを大切にする人は、小さな変化から予防的効果を得る人なのでしょう。そういう効果を得られるのがこの鏡なのですね。

外から押し付けられるチェックに、人は無意識に反発しますから、そうではない方法をきちんとデザインする必要があるのです。そういう意味で、この鏡はとても優れたデザインではないかと考えています。

ちょっと角度が違いますが、札幌の地下鉄では飛び込み事故を予防するためにホームの端の階段そばに大きな鏡を付けてあったことがあります。ホームドアが整備された今、そのままついているかは未確認なのですが、心理的な効果を期待して付けられたものでした。これもよく練られたデザインのひとつだなあと思いました。

入り口チェックの効果が上がらないと悩んでいる職場があったら、この大きな鏡、取り入れてみたらどうでしょう?

そして、チェックを増やすことよりも、人の自然な動線に着目したデザインをすると良いのではないかと思います。

そう。あれですよ。ソーシャルディスタンスをなんとなく守ってしまう床にある印。ああいうのがよくできたデザインなんだと思います。

僕はデザイナーではないので、これより深いことは語れません。でもデザインは問題を解決するためにある。そういうことを考えるいいきっかけになるエピソードでした。

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