刹那はアト(atto)
読書と編集 千葉直樹です

ふと本棚から「難読漢字選び辞典」というのを引っ張り出してみました。パラパラといくつかのページを開いて見ていると、案外聞いたことがある言葉が多いものだなと思います。この辞典の企画意図は、全てを網羅すると言うよりはネタに使える言葉を集めてあるということだと思うので、まあまあメジャーな言葉が集まっているのでしょう。

「ふーん」と思いながら読んでいて、ふと目についたのが「刹那」です。
これ、ごくごく短い時間のことを言いますね。仏教用語で、時間の最小単位なのだそうです。
仏教の世界には、とてつもない量を表す言葉がたくさんあります。どれも「とにかく途方も無い量」を表しているので、厳密にどういう量と表現するのはあまり意味がないのですが、諸説あるというレベルで数学的な単位としても定義されているのが面白いです。
で、「刹那」は10の-18乗なのですね。もちろんこれを絶対量にするにはさらに基準となる量をかけることになりますが、一応単位としてあるらしい。
で、これをよく使われるSI接頭語の単位、キロとかメガとかいうやつ、これで同じ単位のものがないか調べたら、Attoというのが対応します。
Attoの千倍が「フェムト」その千倍が「ピコ」。このへんになると実際に使われています。コンデンサの静電容量は「ピコファラッド」で表すことがありますし、レーザーのパルス幅は「フェムト秒」というのがわりと使われているみたい。
でもいろいろ調べてみても「アトxx」っていうのはあまり使われていないみたいです。
使われていないのは、直感的には工学的にモノを扱うときの物理的な限界に近いからなのではないかと思います。まあ、今は理論の世界でも実用の世界になってくることはありうるのであくまでも現時点ではということになるのかもしれませんが。
そういう厳密な話をとりあえず置いて、「刹那」が実用上の最小単位に近いと考えるとなかなかおもしろいなと思うのです。
この単位を秒で使うとするとアト秒。この短い時間のパルスとして照射するレーザーを使うと、今は電子の動きを見ることができるそうです。電子の動きを見ることができると化学反応のメカニズムがもっと詳細にわかるのだそうです。これがわかるとエネルギー効率の良い「何か」が使えるようになるかもしれません。
未来にはこのレベルの単位を使って今は思いも寄らない凄い「何か」が使われるようになるのでしょう。
そう考えると人は「刹那」のレベルにやっと到達しつつあるところと言えるかもしれません。
「刹那」を考えた想像力、なかなかすごいと思いませんか?